倍音という音のしくみ
ひとつの音を鳴らすと、実は耳には聞こえない無数の音が同時に響いています。 これが「倍音」です。
この倍音の重なりこそが、古代から伝わる癒しの音の秘密だと言われてきました。 チベットのシンギングボウルを鳴らした時の深い響き、グレゴリオ聖歌の神聖な音色。 これらはすべて、倍音の豊かさによって生まれています。
そして現代では、「ソルフェジオ周波数」として語られる特定の周波数も、この倍音の世界と結びつけて考えられるようになってきました。
古代が知っていた倍音の癒し
古代の人々は、特定の音の振動が人間の心や魂に深く働きかけることを、体験的に理解していたのでしょう。
シンギングボウルを鳴らすと、基本の音だけでなく無数の倍音が空間を満たし、その複雑な波動が心を静めていく。
そうした体験から、祈りや瞑想の場で大切に使われてきたと考えられます。
同じように、グレゴリオ聖歌の倍音豊かな響きは、祈りの場に特別な空気を生み出し、心を落ち着かせる力があると感じられてきました。
これらの伝統的な音には、共通点があります。
それは、単一の周波数ではなく、倍音という複数の周波数が織りなす複雑な波動が、私たちの心身に働きかけているということです。
ソルフェジオ周波数という現代的アプローチ
20世紀以降、「ソルフェジオ周波数」という考え方を広めたのは、ジョセフ・プレオとレオナルド・ホロウィッツという人物たちだとされています。
彼らは、古い聖歌や数秘の発想などを手がかりに、特定の周波数が人間の心身に良い影響を与える可能性について、独自の解釈を提示しました。
ソルフェジオ周波数の中でも特に知られているのが、528Hzです。
「愛の周波数」「奇跡の周波数」と呼ばれ、ヒーリング音楽の世界では象徴的な存在になっています。
実際、シンギングボウルが生み出す倍音の中に、528Hz付近の周波数が含まれることもあります。
一部の研究では、528Hzに調整した音楽を聴くことで、ストレス指標や自律神経のバランスが変化し、緊張や不安が和らいだという報告もあります。
まだ少人数の研究で、決定的な結論ではありませんが、「周波数によって心身の状態が変わる可能性」を示唆する結果といえるでしょう。
また、バイノーラル・ビートなどの音刺激を用いた研究では、特定のリズムや周波数パターンの音を聴くことで、瞑想時に見られるような脳波パターン(α波・θ波など)が増える例も報告されています。
このように、「音のパターンが、意識状態に影響しうる」という点で、倍音や周波数への関心は、現代の脳科学とも少しずつ重なり始めています。
倍音が体に響く仕組み
シンギングボウルの倍音を体験すると、音が体の中を通り抜けるような感覚を覚えることがあります。 これは、倍音の複雑な波動が、私たちの体内の水分や細胞に共鳴している、と考えることもできます。
倍音は、単純な一音とは異なり、さまざまな周波数が同時に体に届きます。 ある倍音は表層の筋肉に、別の倍音は深部の組織に、さらに別の倍音は神経系に働きかけているかもしれません。
こうした多層的な振動は、次のような体験として感じられます。
・体の緊張が、音とともに層ごとに溶けていく感覚
・心の奥深くが静まり返るような、深い安らぎの状態
・時間の感覚が変わり、深い意識状態に入る感覚
・瞑想が自然と深まり、雑念から解放される感覚
こうした周波数を含む倍音や音楽が、多くの人に「落ち着く」「癒される」と感じられているのも事実です。
倍音という音の現象は、古代の知恵と現代科学が出会う場所にあります。
現代の私たちは、そこに「周波数」「Hz」といった物差しを当てることで、その不思議な力を少しずつ言葉にしようとしています。 ソルフェジオ周波数も、そうした試みのひとつだと言えるでしょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
